「月光の囁き」関連日記

「月光の囁き」関連の日記を、国樹の過去日記から抜粋してみました。

1998年10月16日(金)

 喜国さんの漫画『月光の囁き』を原作とした実写映画の撮影が無事クランクアップを迎えたので、その打ち上げ宴会に行く。
 塩田明彦監督は若く気さくないい人で、原作に惚れ込んでくださっていた。監督と話していると、まるで喜国さんと話しているような錯覚におちいる程、考え方が似ているのに驚く。お酒が一滴も飲めないという点まで同じ。

 ヒロイン役の女優さんつぐみちゃんのあまりの可愛さにうっとり。サブキャラの女優さんたちも噓みたいに可愛い。皆ある種のオーラを放っている。これが「一般人」と「女優」の違いなのか。ヒーロー役の水橋研二さんは実年齢よりはるかに若く見えるタイプで、高校生役がぴったりという感じだった(原作では中学が舞台だが、映画では高校に)。ヒロインの姉役の井上晴美さんはTVで観ている印象だと長身という気がしていたのだが、実際は全然違って、小さい上に細い。もちろん超綺麗。映画というのはキャスティング命だと思うのだが、どの役者さんもイメージにぴったりだった。
 
「塩田組」として、この映画のために召集された撮影チームのメンバーもホットな楽しい人ばかり。特に体力勝負という音声担当の人がブルーハーツの『リンダリンダ』を歌いながら、腹筋、反復横飛び、ヒンズースクワット、腕立てふせをこなしたのには大笑いしつつも感動すら覚えた。私も体力つけよう。
 
 追記。この映画のヒロインは犬を飼っているのです。以下監督と私の会話。

監督「いやあ、犬が演技をしなくてね、困りましたよ」

私「(冗談で)えっ、じゃあ、うちの犬でも出られました? すごくおとなしくて、扱いやすいタイプなんですよ」

監督「連れてきてもらえばよかったなあ!」

私「……連れて行っていたら本当に映画に出演出来たんですか?」

監督「(きっぱりと)はい」

 一生の不覚! こたのスクリーン・デビューのチャンスがあああ!

1998年11月26日(木)

 今日は『月光の囁き』試写会へ。日活本社にて内々の試写会である。既に心臓ばくばく。だって、アニメじゃなくて実写映画。原作者である喜国さんはどんな気分なんだろう。塩田監督にすすめられるまま最前列に座ったら、隣りが日活の社長さんで更に心臓ばくばく。そして、試写は始まりました。

 ……試写終了。直後の正直な感想。面白かったです! 映像がすごく良かった。印象的なシーンがたくさんあって、短期間で撮った低予算映画とは思えない。つぐみちゃん可愛かった。ヒロイン紗月を可憐かつ大胆に演じていました。
 でも何より水橋研二さんの上手さにびっくり。原作の拓也というキャラクターに対して、複雑な感情を持っていた私なのですが、水橋さん演じる拓也は大好きです。かなり原作に忠実な脚本だったので、喜国さんは各セリフ相当くすぐったく聞こえたことでしょう。
 
 公開前にあれこれ書くのも何なので、これくらいにしておきますね。あっ、もうひとつだけ。監督が「こたくんに出演してもらえば良かったですね」と、また言ってくださって、口惜しい。スクリーンいっぱいの犬のアップとかあったんです。ああ、あきらめの悪い私で恥ずかしい。とにかく、あっと言う間の100分間でした。2時間くらいあっても良かったな。
 
 終了後、塩田監督、監督の友人で脚本家の高橋洋さん、喜国、国樹でお茶。高橋さんはあの名作ホラー『女優霊』『リング』の脚本を手がけられた方です。両方共に大好きな映画なので、興奮して話しまくってしまいました。今は『リング2』で大変だとか。早く観たい!

1999年9月23日(木)

 公開間近の映画『月光の囁き』を応援してもらう女の子たちのオーディションに審査員として参加していた喜国さんが夜に帰宅。選考基準は「制服と眼帯の似合う女の子である」ということ。選ばれた子たちのデジカメ画像を見せてもらったんだけれど、みんな可愛い。彼女たちは「紗月ーず」(笑)として、宣伝のお手伝い等してくださるそうです。

1999年10月20日(水)

 今日は新宿のロフトプラスワンへ。『月光の囁き』映画公開記念SMイベント(ははは)があるのです。遅めに到着したら、既に場内は満員。たくさんの友人達も来てくれていました。 
 
 イベント自体は想像以上にすごかった。女王様達の美しいこと。皆さんその筋では有名な方ばかりで、スタイル抜群。足なんて特に綺麗。レザーから着物まで幅広い衣装に身を包み、びしばしムチをふるっておられました。全身にタトゥーを入れた女王様が実は私たち夫婦と親しい某バンドのベーシストさんと仲良し(SMの関係ではなく、ただのいい友人関係)とわかり、驚く。狭い世界……なのかな? M女さんたちは皆、最終的にみみずばれだらけに。でも平然としていて、すごいです。
 
 しかし自分的に一番すごかったのはライターの松沢呉一さんと喜国さんとのトークショーですね。真剣に冷や汗出た……。ずっと松沢さんのファンだったので、一緒していただけたのは嬉しかったのですが。
 この日の模様は大森望さんの日記と、河内実加さんの日記でも見られますので、是非どうぞ(なんたる他力本願)。河内さんのは美麗イラスト日記なんですよ。

1999年10月23日(土)

『月光の囁き』映画初日。喜国さんは初日の舞台挨拶があるので早めにテアトル新宿へ。
 ん? 映画館のあたりがすごい行列。同じビルの中にある『かに道楽』に並んでる人? なんて思っていたら(本気)、列はテアトル新宿に続いているではありませんか! うわー、うわー、信じられない! 身内も既にたくさん並んでいてくれて、もう嬉しすぎ。

 会場は超満員の立ち見状態。塩田明彦監督、水橋研二さん、つぐみちゃん、草野康太さん、関野吉記さん、藤村ちかちゃん、喜国さんでの舞台挨拶も大ウケしつつ無事終了。試写を何度も観ていた私なのに、大勢のお客様たちと映画を鑑賞出来て、なんだか言葉にしがたいくらいの感動。
 
 映画終了後、監督、役者さん、映画館スタッフさんたちと満員御礼を喜び楽しく飲み明かしました。

1999年10月24日(日)

『月光の囁き』映画公開記念喜国雅彦タコシェ1日店長。中野ブロードウェイ内にあるタコシェはカルトな漫画ファン向けのお店で、置いてある品も興味深いものばかり。
 今日もお友達がたくさん来訪。作家の貫井徳郎さんなんて、ご家族揃って来てくださった! あんなあやしい店によくぞ。古屋兎丸さんもお忙しい中、本当にありがとうございます!

1999年11月5日(金)

 丁度来日中のサンフランシスコ在住友子ちゃんに『月光の囁き』を観てもらうためテアトル新宿へ。うわっ、また人がいっぱい並んでる。嬉しいぞ。今日はみうらじゅんさんと喜国さんのトークショー付きな月光。またまたお友達がたくさんで感涙。トークショーはすごく面白かったです。さすがみうらさん。テレタビーズのリュックがお似合いでした。
 
 映画が始まったのでそっと外に出て、みうらさん、ウスイさん@みうらじゅん事務所、大森望さん&さいとうよしこさん夫妻、喜国さんと私でお茶。映画が終わる頃、大森夫妻と映画館に戻る。

1999年11月20日(土)

 本日は作家の山口雅也さん夫妻とテアトル新宿へ(何回目かな……)。今日は塩田監督と喜国さんのトークショー付きオールナイトSM映画4本立てという豪華版。トークショーはかなりコアなフェチ話へと展開し、盛り上がりました。
 
 そして映画。まずは『月光の囁き』。初めて観る山口さん夫妻はとても面白がってくださって良かったー。
 
 お次は『盲獣』(江戸川乱歩原作)。……すごい映画。大ウケしている山口さん夫妻と並んで観たからあんなに楽しめたけど、冷静になって考えるとあんまりな内容。痛いし超悲惨で、『月光~』が爽やかに思える程。山口さん夫妻はここでお帰りに。長々とお付き合いありがとうございました。
 
 さて3本目『春琴抄』(谷崎潤一郎原作)。山口百恵ちゃんが主演で、昔観たことがあったのだけれど、大人になって観ると受ける印象が全然違う。なんとすごいSM映画なのか! これをアイドル映画だと思ってた私はコドモ。友和めちゃくちゃかっこいい……。喜国さんは本当に『谷崎派』なのだと実感。
 
 やれやれようやく4本目『花と蛇』(団鬼六原作)。そしたら喜国さんが「帰ろうか」と。「えっ、どうして?」「だって、団鬼六ってサドだもん。俺サド興味ないし」ううむ、ポリシーの徹底した人。でも私は観てみたいと主張し、観ていくことに。想像と全然違う映画でした。とことんサドだけど、ギャグだった。一番嫌だった攻め(たぶん邪道)は「あおむしをいっぱいお尻に載せる」というもの。超やだ! 他の王道な攻めの数々も超嫌でしたが。
 
 徹夜で挑んだオールナイトだったので、絶対途中で寝てしまうと思っていたのに、気が付けばギンギンでした。はああ、くたびれた。SMはもういいー。おなかいっぱいです。結論「Mは強し!」本当に。

*喜国雅彦&国樹由香*

 

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